Lacock

Chamberlain's House, Lacock (2000年7月9日撮影)

Lacockは、コッツウォルズの南にある小さな村です。

4本の道に囲まれたこの小さな村は、村全体をNational Trustに管理されているとても変わった性格を持つ村です。

なぜ村全体がNational Trustに管理されているのか? それは、Lacockの村が、村全体をそのままのかたちで残すという「National Trust」と、見たものをそのまま残すという「写真」の共通点が、その思想だけでなく、空間的にも共通の所で出会った場所だったのです。

 

Lacock Abbey (2000年7月9日撮影)

Lacockの村は、四角い形をしています。 その東にLacock Abbeyという1232年に造られた、とても大きな寺院があります。 このLacock Abbeyは、ヘンリー8世の施行した、修道院解散により、Norfork州の富豪、Sir Williams Sharingtonに売却されます。

現在でもLacock Abbeyは外観こそ修道院としての大きな建物ですが、内部は人が住める豪邸として改修されています。

この時以後、このLacock Abbeyを所有するSharington家が、村全体を持つことになりました。

 

Sir Williams Sharingtonには子供がおらず、兄弟のSir Henry Sharingtonが引き継ぎます。 そしてHenryの末娘であるOliveがSir John Talbotと結婚し、Talbot家がその後、Abbeyと村の権利を何代にも渡って引き継いで来ました。

1800年2月11日、Talbot家に男の子が生まれます。 彼こそがWilliam Henry Fox Talbot、ネガ、ポジの銀塩写真の発明家です。

 

The Lacock Bakery (2000年7月9日撮影)

 

George Inn (2000年7月9日撮影)

Fox Talbotは、1833年イタリアのコモ湖畔で美しい景色を見ながら、既に当時は200年位前に発明されていたCamera Obscura(レンズのついた暗箱の中に、すりガラスのスクリーンがあるもの)をのぞいて、薄紙の上を鉛筆でなぞりながら、なんとか人が、鉛筆で風景をなぞるのではなく、「自然の力」で書くことはできないものかと思います。

彼は、イギリスに帰ってからニトロ溶液に溶かした銀が、光に反応することを聞きつけ、これを紙に塗って光に当てた部分が薄い塩水の中で黒色に変色することを発見します。

これをCamera Obscuraと組み合わせて、1841年に当時Calotypeと呼ばれた特許を取ります。

St. Cyriac's Church, Lacock (2000年7月9日撮影)

 

Church Street (2000年7月9日撮影)

 

その後、1844年から1846年にかけ、Calotypeを大々的に紹介し、ネガからポジへの写真術として展開した「The Pencil of Nature」という、彼がイタリアの湖畔であったらいいなぁと思った、その名前の本を刊行しました。

その本の中は、大半がLacockの村の様子や、Lacock Abbeyだったようです。

Fox Talbotの末裔である、Miss. Matilda Talbotは、Lacock Abbeyをはじめ、Lacockの村全体を1944年にNational Trustに寄贈しました。

National Trustの管理となったLacockの村は、まるでFox Talbotが200年前に銀塩に焼き付けたと同じように、そのころから変わらない風景が保たれることとなったのです。

この村を訪れて、写真とNational Trustのすばらしい関係について考えることができました。

Fox Talbot氏が、今私の撮っているデジタルカメラというものを見たらいったい何を思うでしょうか・・・・・

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