ICOMリグ:CW音声スペクトラム比較-1
今日もICOMの4台のリグで比較試験をやってみました。 内容はWaveSpectraを用いた音声周波数でのスペクトラム比較です。
昨日はSSBの音声を比較しましたが、今日は、まずはCWにおいて、内蔵スピーカーを使った場合について比較してみます。 全部のグラフを通して赤いチャートグラフに注目してください。 赤いラインがPeak値の連続線なので、周波数特性のContourを表しています。
IC706
- 周波数 : 7MHz
- Filter BW : 350Hz
- AGC : Fast
- NB : Off
- NR : 無し
- Pre Amp : Off
- スピーカー : 内蔵スピーカー
赤いラインはCWのRF信号の周波数を変えて、CW音声信号のピーク点が作った連続線です。 音声として通ることのできる周波数帯域とそのスペクトラム成分をあらわしています。 この例でいくと
ピークから20dB落ちの帯域が490Hz ~ 900Hzくらいになっている。
帯域内には下記のような、ピークが2つほどあることがわかります。
- 510Hz : -10dB
- 650Hz : -10dB
このピーク時のレベルは、すべての機器間で校正しているわけではないので、あまり意味がありません。 ピークからどれくらい落ちるかという相対数値では意味があります。 それではCW無信号時のノイズフロアのスペクトラムを見てみます。 当然ですが音量は変えていません。 これは全部の試験を通じて同様です。
先ほど調べたピークから20dB落ちの帯域でのノイズフロアが非常に低いことがわかります。
信号の通るピークポイントでのノイズレベルは
- 510Hz : -37dB
- 650Hz : -33dB
くらいでしょうか? その場合、信号との差である、D/U比は
- 510Hz : 27dB
- 650Hz : 23dB
ということになります。 結構いい数字だと思います。 でももしかしたら、ノイズレベルの低さは、そのまま感度の低さなのかもしれません。
IC706MK2
- 周波数 : 7MHz
- Filter BW : 350Hz
- AGC : Fast
- NB : Off
- NR : 無し
- Pre Amp : Off
- スピーカー : 内蔵スピーカー
ピークから20dB落ちの帯域が300Hz ~ 900Hzほどあります。 IC706に比べて低音側が広がりました。 IC706MK2ではIC706に比べてスピーカーサイズが、5cm径から6cm径に大きくなっていることが理由だと思います。
帯域内には下記のような、ピークが5つほどあります。 それぞれのレベルは
- 350Hz : -19dB
- 400Hz : -19dB
- 500Hz : -15dB
- 680Hz : -10dB
- 780Hz : -10dB
このようにピークポイントも多くなり、IC706よりも帯域が広くなっています。 ではノイズフロアを見てみます。
IC706に比べてノイズフロアがあがっていることがわかります。
信号の通るピークポイントでのノイズレベルは
- 350Hz : -45dB
- 400Hz : -40dB
- 500Hz : -33dB
- 680Hz : -28dB
- 780Hz : -30dB
くらいでしょうか? その場合、信号との差である、D/U比は
- 350Hz : 26dB
- 400Hz : 21dB
- 500Hz : 18dB
- 680Hz : 18dB
- 780Hz : 20dB
ということになります。 IC706よりも信号レベルとノイズフロアレベルの比が減りましたが、周波数の上と下の部分でD/U比の差が大きくなっていることがわかります。
感度が上がった分ノイズフロアがあがり、それを音声帯域の拡大でカバーしているといったところでしょうか? 勝手な想像ですが。
IC756PRO2
- 周波数 : 7MHz
- Filter BW : 350Hz
- AGC : Fast
- NB : Off
- NR : Off
- Pre Amp : Off
- スピーカー : 内蔵スピーカー
ピークから20dB落ちの帯域が400Hz ~ 800Hzほどあります。 IC706系に比べて通過する帯域がぐっと狭くなり、高音側が削られています。 音響音楽の受信ではなく、CWですから狭くても聞きやすければ良いわけです。
帯域内には下記のような、ピークが5つほどあります。 それぞれのレベルは
- 300Hz : -35dB
- 420Hz : -20dB
- 500Hz : -15dB
- 600Hz : -15dB
- 720Hz : -10dB
このようにピークポイントも多くなり、IC706MK2よりも400Hz以上のピークレベルが均一化し、帯域がフラットになっています。 これだけでも聞きやすくなりますね。 300Hzにある山は隣接CW信号がDSPフィルターを通る時に聞こえる、コツコツという音の成分です。 DSP機で新たに出てきた特徴です。 ではノイズフロアを見てみます。
信号がありませんので、当然ですがコツコツというDSPフィルターの隣接CW信号からのノイズ成分は消えました。 しかし、IC706MK2に比べて更にノイズフロアがあがっていることがわかります。
信号の通るピークポイントでのノイズレベルは
- 300Hz : -47dB
- 420Hz : -32dB
- 500Hz : -27dB
- 600Hz : -30dB
- 720Hz : -23dB
くらいでしょうか? その場合、信号との差である、D/U比は
- 350Hz : 12dB
- 400Hz : 12dB
- 500Hz : 12dB
- 680Hz : 15dB
- 780Hz : 13dB
ということになります。 ノイズフロアが増えた分だけ、IC706系よりもD/U比が減りました。 ノイズフロアの上昇は感度の改善かもしれません。 しかし、IC756PRO2では帯域内の周波数特性がフラットになり、また試験時はOffになっていますが、NRやDigital Filterにより、このD/U比を補う機能が実装されたため、これでもIC706系よりもはるかに聞きやすいことは事実です。
IC7000
- 周波数 : 7MHz
- Filter BW : 350Hz
- AGC : Fast
- NB : Off
- NR : Off
- Pre Amp : Off
- スピーカー : 内蔵スピーカー
ピークから20dB落ちの帯域が400Hz ~ 800Hzほどであります。 IC756PRO2と通過する帯域はほぼ同じですが、帯域内のフラットな周波数特性は逆に見えません。 低音まで伸びているSSBの特性とちょっと違っています。
帯域内には下記のような、ピークが4つほどあります。 それぞれのレベルは
- 500Hz : -20dB
- 600Hz : -18dB
- 700Hz : -10dB
- 800Hz : -7dB
帯域内でのレベルはIC756PRO2のようにフラットではなく、特に高音域でピークが来るようになっているようです。 ところで同じDSP機ですが、IC756PRO2で存在していた300Hzにあるコツコツという音の成分が消えています。 私はこれはすごいことだと思います。 実際に周波数をずらしていくと、コツコツ音が出るあたりではS-メータは触れているのですが、コツコツ音がほとんど聞こえません。 おそらくAF段で、この成分を除去しているのではないでしょうか? IC756PRO2に比べて改善されている最大の特徴ではないかと思います。 IC756PRO2にて実現した帯域内のフラットな周波数特性が見えなくなったのは、おそらくこのコツコツ音を消すために帯域内で低周波成分をカットするような形になっているのではないかと思います。 また、SSBの低音まで伸びている周波数特性と異なっているのもこのためでないかと思われます。 全体的に非常にシャープなスカート特性になっています。 ではノイズフロアを 見てみます。
どうでしょうか、他に比べてノイズフロアが非常に低いことがわかります。
信号の通るピークポイントでのノイズレベルは
- 500Hz : -40dB
- 600Hz : -37dB
- 700Hz : -27dB
- 800Hz : -28B
くらいでしょうか? その場合、信号との差である、D/U比は
- 500Hz : 20dB
- 600Hz : 19dB
- 700Hz : 17dB
- 800Hz : 21dB
と いうことになります。 IC7000ではIC706系よりも確実に感度は上がっているはずですが、ノイズフロアは低い状態を保ち、更にDSPフィルターにつきものの、隣接周波数からのコツコツ音も消し、シャープな帯域特性を生かしている。 さらに、おまけとしては、あまりにも大きな効果である、NRやDSPの恩恵も受けられるといううことになると思います。
尚、これらの実験データはあくまでも個人の偏見が含まれているかもしれませんHI。 無響室でやったわけでもありませんので、参考としてみてください。