
1kWへの道-3
アンテナは準備できましたが、落成検査時までに準備しておくものがあります。 それはダミーロード。 試験だけのためでなくダミーロードは実際のメンテナンスでも必要です。 しかし、1kWの入力に耐えることのできるダミーロードは並大抵のものではありません。
私はオイル冷却のダミーロードを使うことにしました。 これはIC-7610 と一緒にすでに1月に準備をしておりました。
MFJ-250Xという米国製品です。 耐入力は1.5kWです。 自作も可能ですが、とにかく大電力ですので広帯域でのSWR特性が保証されているものが必要です。どこかの周波数で異常反射があると大電力ゆえに大きな事故につながります。
このMFJ-250Xは缶の中に冷却用のオイルを入れて使いますが、オイルはまだ準備していませんでしたので、どんな冷却オイルを入れるか考えました。もちろん引火性のあるオイルなどは論外です。まず発火点が高く、電気的に特性が安定し、絶縁抵抗も高く、化学的性質、品質も長期に渡り安定し、放熱のため高い流動性と低い比熱が必要です。
昔から食用のサラダ油を使うケースが多いですが、純正はトランスフォーマーオイルといわれる絶縁油が推奨されています。 しかし、このトランスフォーマーオイルがなかなか見つからない。見つかっても18リットル単位の販売などです。 良いものが見つからないので一時はサラダオイルで行こうかと思いましたが長期での腐敗や変質が心配です。
そこでいろいろと調べたのですがJH4VAJさんのサイトに流動パラフィンとシリコンオイルの話があり参考にさせていただきました。
流動パラフィンも安くて魅力的でしたが発火点が260度くらい、シリコンオイルは300度以上ということでシリコンオイルを使うことにしました。 信越化学のシリコンオイルにもいろいろと種類がありますが、粘度を調べると、KF-96-50CSというタイプがサラダオイルに近いようです。(冷却オイルの選定は自己責任でお願いします。)
さらにこのKF-96-50CSは車のシリコンコーティングでだいぶ人気があるようで、オイルが余ったらこれに使うことにもできそうです。
MFJ-250Xの内部に入れるには1缶どころでは足りません。3.5リットルほど必要です。4缶アマゾンで買いました。
この下の写真の状態で3缶、3リットルを入れた状態です。まだ足りていません。 決してこれくらいでも大丈夫だろうなどと安易に考えない方がいいです。
右に見えるダミーロード本体がしっかりと油没する状態でないと危険です。
あまりにも缶のギリギリまでオイルを入れるのは逆に問題ですが、とにかく1kWかけた時に発生する熱量がすごいです。 きちんとダミーが油没している必要があります。
完成し、1kWをかけてみましたが、すぐに缶の上部が熱くなります。 数十秒で缶の上部は触れないくらいになります。 缶の下は冷たいままですが上部、そしてフタの部分は触れない状態になります。 1kWのエネルギーがどれくらいのものかを感じることができます。 フタの部分で焼肉ができるくらいの熱です。 こんなエネルギーをアンテナにかけて本当に大丈夫なのかと思うくらいです。
とにかく想像していた熱量とは全く違うことに驚きました。今はこのダミーロードを耐熱のポリ袋に入れ(上部は閉じない)、丸ごと鉄製のごみ箱に入れています。 缶の上部と下部での温度があまりにも違うため、缶がひずんで裂けてしまうのではないかと思うためです。
1kWとはそれほどのエネルギーです。 決して侮ることのないように覚悟して取り組む必要があります。
う~む、臨場感あふれるレポート、ありがとうございます。全く未知の世界なので、非常に参考になります。考えてみれば、昔の中波の福島放送の出力が1kwでした。放送局と同レベルのパワーですもんね。
こばさん、
そうですよね、AM放送の地方局や中継局はこれくらいのところもたくさんありますから、そう思うとやはり安全には気を使いますね。
明日から書き溜めたもの一日1本のスピードで投稿をしていきます。ご参考になされてください。