IC-705受信特性比較-3


先日IC-705とFT-817NDを実際に使う山での比較をやってみたのですが、それほど受信感度に差がないように思ったのですが、非常に弱いCW信号の聞きやすさについてはFT-817NDの方が良いように感じるところがあったので、もう少し詳しく調べてみることにしました。

この山での受信比較は両方の特性を合わせるためにCWフィルターの帯域を両方500Hz に合わせてやっていました。

IC-705もしくはICOMのダイレクトサンプリングのSDRをお持ちの方はわかると思うのですが、DSPフィルターは本当に切れが良く、ホワイトノイズをCWフィルターをかけて聞いてみると一部の音声帯域だけが切り出されて聞こえるため「コー」という「音」が聞こえます。

500Hz のフィルターをIC-705とFT-817NDに適用してCWモードでホワイトノイズを受信した場合の音声帯域のスペクトラムはこのようになっています。

スペクトラムの見方は緑が過渡特性で瞬間瞬間の音声スペクトラム強度があらわされています。 赤はピーク値です。 このため赤いグラフを見ていただく方が良いです。 緑は瞬間値なのであまり意味はありません。

FT-817NDの場合

下のようになっており全体的に丸い包絡線を持っています。サイドの切れ方は緩やかです。アナログのフィルターですのでこれは普通だろうと考えられます。このため音色もジャーという感じで音域が限られるわけではありません。ノイズがノイズとして聞こえるという感じです。つまりノイズを意識的に無視できます。ここで特に注目してほしいのは300~400Hz近辺のノイズレベルの低さです。

IC-705の場合

次にIC-705のCWモードで500Hz帯域でホワイトノイズを聞いてみます。デジタル処理された非常に切れの良い特性が見えます。 サイドの切れは切り立つ断崖絶壁のようです。しかし、切れているからこそ一定の音域だけが聞こえることになり、その音域が意味を持ってくることになります。これが「コー」という「音」です。 ノイズがある音域だけで語り掛けてくる感じです。 そしてよく見ていただきたいのは300~400Hz にさらに高いレベルのノイズがあることです。これが邪魔ものなのです。

次に実際のCW信号を受信してみます。 弱い信号を探し、CWトーンが600Hz になるようにVFOで同調してみます。 弱い信号を探す理由は強い信号だとノイズフロアとの差が大きく聞きやすさ、聞きにくさの区別ができないためです。

まずはFT-817NDです。 フィルターで切られたノイズのフロアから600Hzの信号がピークとして見えています。 邪魔者がいない感じですね。

次はIC-705で、CWフィルターをFT-817NDと同じ500Hzにして聞いてみます。 相手局信号は同じように600HzのトーンになるようにVFOで同調し、音声レベルも大体 -20dBに合わせます。

どうでしょうか? CWの600Hzのトーンはノイズから浮き出しているものの300~400Hzのノイズ成分が大きく、レベル的にはCWの600Hzと同じくらいのレベルまで達しています。 音域は全く違いますのではっきりとCW信号は聞こえますし、了解度も問題はありませんが、聞きやすさという点では違う音域のノイズが邪魔をしている形です。 さらに、このCWのトーンはその人の聞きやすさの嗜好によるところも影響を与えます。 例えば、CW信号を低い音域で聞くことが好きな人は、このCW信号が300~400Hzの音域に近づくことになります。その場合はSN比が悪くなることになります。

この300~400Hzの音域を削るにはDSPフィルターのパスバンドで少し下の方を切ってあげると良いことになります。

下記のスペクトラムはフィルターの下側だけを100Hz削って帯域幅を400Hzに設定した時のものです。同じ局の信号です。だいぶ300Hz~400Hzのノイズ成分が減りました。600HzのCWトーンが浮き立ってきました。

もう少し下の周波数を削ってみます。 パスバンドを50Hz削って、帯域幅を350Hzにしてみると、スペクトラムはこんな感じになります。

300~400Hz近辺のノイズ成分は完全に低減され、CWの信号が浮き立ってきます。

サイドの切れはそのまま残し、耳につく300~400Hz近辺のノイズを減らすとノイズフロアギリギリのCW信号もとても聞きやすくなります。また、フィルター帯域を250Hzにすることでも改善されます。これは感度として改善されるわけではありません、あくまでも聞きやすさですので人によって違うと思います。

他にもIC-705にはデジタルフィルターのシェイプをシャープ・ソフトの切り替え機能もありますがこちらではあまりこの300~400Hz近辺のノイズ低減には関与していないようでした。

ノイズフロアギリギリの弱いCWを受信する時には、ぜひお試しください。

 


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