スプリアス測定


スプリアス測定方法についてちょっと書いておきます。

測定周波数範囲

一般にスプリアス測定は2倍波、3倍波、5倍波あたりまでが強く出てきますので、そのあたりが見えるように測定する周波数範囲を測定する必要があるかと思います。

例えば14MHzでスプリアスを測定する場合は5倍波が70MHzくらいになりますので 80MHzくらいまで調べることでよいと思います。

 

送信出力

次に注意しなくてはいけないのは送信出力です。 アマチュア無線で使用する送信機は通常数十Wから数百Wですので、これをそのままスペアナにいれると確実にスペアナは壊れます。 では・・・・ということで、送信出力を下げればいいのですが、最小に絞ってもスペアナの許容入力電力を超えてしまう場合がほとんどです。 そのため送信機とスペアナの間にアッテネータを入れる必要があります。

これは、もう一つの観点があり、仮に送信機の出力を思いっきり下げてスペアナで測定できるくらいまで出力を落としたとしても、その状態でスプリアスを測定して本当に意味があるのかという点です。 スプリアスにはいろんな成分がありますが、送信電力に比例して大きくなるものが大半です。 また実際にスプリアスが問題になるのもそのような送信電力比例の成分です。 ということで、つまり送信出力を思いっきり落としてスプリアスがスペックを満足するからOKと判断するのはとんでもない間違いです。 正しくは送信出力は最大として、アッテネータを十分入れた後に、スペアナで測定するのが、その送信機における正しいスプリアスの測定方法となります。 ただアッテネータの耐電力およびスペアナの入力電力にはくれぐれも注意する必要があります。

Resolution Band幅

次に大切なのはスペアナのResolution Band幅(RBW、通称レゾバン)を適切に選ばないといけません。 Resolution Bandwidthとは解像度のことです。 スペアナはある周波数幅の中にどれくらいの電力成分があるかを順次測定していきます。 これを大きくとるということは、その広い単位バンド幅の中にある電力成分を測定しているので、スプリアスのように低いレベルでかつ帯域幅も細い成分はほぼ何も無いかのように見えてしまうということになります。 例えばレゾバンを1000という単位でその中に1という単位の電力成分があった場合は1/1000という測定結果になりますが、レゾバンを5という単位にした場合、同じ1という電力成分は1/5となります。 結果は明らか、レゾバンを広くとると、そのスプリアスは見えなくなってしまいます。 ただレゾバンをあまりにも小さくすると今度はスイープ速度が遅くなります。 スペアナの中での演算(フーリエ変換)に時間がかかりすぎるためです。 スプリアスを見逃さず、しかもあまりにも時間ばかりかかるのは避けないといけません。 1回のスイープで何分もかかると、その間送信しっぱなしということになりますので送信機も心配ですし、測定結果も熱の影響で変わってきてしまうかもしれません。

測定方法

下の図のように、送信機とスペアナの間に十分な耐電力のあるアッテネータを入れます。 その出力をスペアナで測定します。 今回のResolution band幅は3kHzとしました。 

アッテネータは大電力用の30dBと、スペアナ入力に10dBと20dBのものを入れました。 合計で60dBの減衰です。

測定結果

この写真はKX2を使って、14.200MHz CWで10W送信で、スペアナのレゾバンを3kHz にして測定した場合のスプリアス測定です。

この場合、第2高調波が一番大きくD/U比は63.7dB となりました。

これをレゾバンを仮に10kHzにしてみると、すでにスプリアスはノイズフロアと同じレベルになってしまいます。

さらにレゾバンを30kHzにした場合、第二高調波のスプリアスはすでにかけらも残っていません。

こんなわけでレゾバンを大きく設定して測定すると、もはやそれはスプリアス測定にはなっていないということになります。

次に送信出力を思いっきり下げてアッテネータを抜いた時の測定結果がこれです。 送信出力は0.1Wとして、アッテネータは大電力の30dBアッテネータを外し、全部で60dBの減衰を30dBにしてみました。 レゾバンは3kHzに戻してあります。

このようにD/U比が送信出力10Wの時に比べ63.7dBから66.7dB に改善されました。 これは送信出力を下げたことで結果が良く見えているだけのもので、正しい測定結果ではありません。 正しく評価するのであれば、やはり送信機はフルパワーでアッテネータを入れて測定すべきものなのです。

ただし、くれぐれもアッテネータの耐電力とスペアナの入力レベルには気を付けてください。

 


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