DiversityとInclusion


最近言われることは減りましたが10年ほど前、アマチュア無線をやっているというと「なんでこんなネットの時代に?」「そんな時代遅れな?」「ネットならいつでもどこでも!」などといわれたものです。当然ですね。私もそう思います。でも無線の楽しみは確実につながることではなく、不確実だからの楽しみや醍醐味にあります。上空100kmにある電離層や太陽活動、時には流星散乱を利用したり、山に反射させたり、なによりその時その人がその周波数を受信していないと通信は成り立ちません。まさに偶然によって成り立つ世界です。

  • インターネット:友達、職場の仲間といつでもどこでも確実につながる
  • 無線:偶然の出会い、自分の価値観と合う人だけではない多様性の中での会話

新型コロナウィルスの蔓延で世界中でリモートワークが進み、無味乾燥した世界になっています。このような無味乾燥した環境の中、世界中の国々でアマチュア無線が見直されています。ステイホームでできるということもあるとは思いますが、私はそれ以上に人間の心の根底にはこの「偶然の出会い」、「自分の知らない人と話をする」、「自分とは全く違う価値観を持つ人と話をする」というような、本来人間が持っている「好奇心」があるのではないかと思っています。

インターネットによって、「いつでもどこでもつながる確実な世界」ができたということの代わりに、人は何かを手放さなくてはならなかったものがある。それが「価値観の違う人との出会い」とか「偶然のめぐり逢い」「多様性への気づき」などによる人間の成長、変化を促す影響力ではないでしょうか? それがコロナ禍のもと、さらに輪をかけて出会いの機会が失われている。

Diversity and Inclusionということが最近大きく取り上げられています。アマチュア無線の世界は古くからこの考えが定着している世界です。 年齢、性別、国籍、障がいの有無、何も関係なく皆さんが話をしています。電信で交信するだけなら音声通信よりもさらに何も差別が無い世界。年齢も、性別も何もわかりません。コールサインを聞くまではどこの国の人かもわかりません。また、無線歴何十年というベテランが小学生のアマチュア局と対等に話をしています。ベテランは子供たちの成長や科学技術への興味の深化を願い、子供たちは早くから広い世界、社会に触れる機会となります。

無線の世界はインターネットの世界と比べたら、はるかに安心、安全な世界です。ネットの世界にはびこる悪の組織も誹謗中傷の軍団もいません。とはいえ無線の世界にも時には通信の妨害をしたり、価値観を押し付けたりする人も中にはいます。これはほんの一部の心無い人間です。しかもこれらはインターネットの危険性とは遥かにレベルが違うものです。これはおそらく無線の世界が匿名ではなく、世界に一つしかない識別符号(コールサイン)が与えられていることと、誰でもその通信の内容を聞くことができる、聞いている可能性があるからだと思います。インターネットで起きてしまう密室での会話がおきないことも大きな違いだと思います。アマチュア局がお互いに犯罪や治安悪化の抑止力となり、世間の目が届く場になっています。

人が様々な価値観を持った人を受け入れ、関わりあえる、その好奇心を満足できる無線の世界を広げていきたいものです。

 


JA1CTV
人生の道

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