コモンモードフィルター修理


先日、FT8で運用中に急遽アンテナSWRが悪化してリニアアンプが緊急停止しました。

障害箇所を調べてみるとコモンモードフィルターがおかしいようです、バイパスすると正常に戻ります。 障害が発生したのはダイヤモンドアンテナのCMF2000。 PEPで2kWなのでCWだと1kWでしょうか? この耐電力仕様なので今まで全く問題なかったのですが、当日は風が強く、アンテナのSWRが瞬間的に変化した時にFT8で送信していたために障害が発生したものと思います。 幸いアンテナやリニアなどには何も障害がありませんでした。 そこで同じモデルを購入して交換したのですが、障害が発生したものを捨てるのは、もったいないので修理することにしました。

コモンモードフィルターはトロイダルコアと同軸だけで構成されていますので、修理は簡単です。 トロイダルコアが破損することは、ほとんどないので、おそらく同軸ケーブルもしくはコネクターとの接続不良かと思います。 テスターで調べてみると、コモンモードフィルターの同軸の芯線と外部導体がショートしているようです。

コモンモードフィルターを分解してみます。 プラスチックフィルムの外皮をカッターで切ると中身は塩ビパイプの筐体です。

塩ビパイプの両端には、M型コネクタの取り付けられている塩ビパイプの封止が使われていました。 そして、塩ビパイプの中に同軸ケーブルが巻かれた5個のトロイダルコアが入っていました。

同軸をトロイダルコアに巻いた後、タイラップで止めてあります。 タイラップの余長分は切断せずにトロイダルコアに巻く形で塩ビパイプに入っていました。 これはそれで内部でトロイダルコアがカタカタと動かないように固定しているものと思います。 ずいぶん安く作ってあります。

片側のM型コネクタの同軸接続部がこんな感じで芯線部分の絶縁体が溶けていました。 この付け根あたりがショートしているのかも知れません。 それであれば、その部分を切断して同軸ケーブルを再度M型コネクタにハンダ付けするだけなので簡単に直ります。 疑わしいところを切断してみましたが、ショートはこの部分ではありませんでした。 反対側のM型コネクタも同じように調べてみると、こちらもコネクタ近辺でのショートはありませんでした。 残念ながら巻かれている同軸ケーブルのどこかでショートしているようです。

仕方なく同軸ケーブルを交換する必要があります。

トロイダルコアから同軸ケーブルを外す前に、特性を再現するためトロイダルコアの巻き数と間隔を調べておきます。

トロイダルコアは5個あり、両端は少し大きいものが2連づつ重ねられたものに4回巻、そしてその間に3個の小さめのトロイダルコアに2回巻となっています。

両端の4回巻とその隣は15mm間隔

2回巻の3個の間隔は20mmです。

これを調べた後、同軸ケーブルをトロイダルコアから外しました。

同軸ケーブルはフジクラダイヤケーブル製のRG-58A/Uです。

同軸ケーブルの長さを測ると1.8mほどです。 マルツオンラインでRG-58A/Uを切り売りで2m購入しました。

同軸ケーブルが到着後、トロイダルコアを同軸ケーブルに取り付けていきます。 やり方のコツは真ん中から作っていくことです。 端からやると両端の余長の調整が難しくなります。 もう一つは、タイラップで止めた部分をケーブルの上に持ってこないことです。 ケーブルの上にタイラップの止め部分を持ってくると、その部分だけが太くなり、塩ビパイプの内径より大きくなって入らなくなります。 汚い絵ですが・・・・

まず、真ん中の2回巻1個目を取り付けます。タイラップの余長分は切らずに残しておきます。

その両端に2回巻を追加

両端の4回巻を追加

塩ビパイプの中に入れます。

同軸ケーブルが長いので適当に切り、M型コネクタにハンダ付けします。 外部導体は圧着端子で取り付けます。

両端取り付けたら、塩ビパイプの封止にM型コネクタを取り付けて組み立てます。

最後に、カッターで切ったプラスチックフィルムの製品仕様ラベルを張り付けておきました。

コモンモードフィルターは周波数特性を測定してもローパスフィルターのように減衰特性があるわけではなく、バンド内でフラットでロスの少ない特性しか見えません。 振幅特性1.0dB目盛くらいでは単に全バンドでフラットな0dBの直線でしか見えません。 このため、一応再現性を確認するために縦軸の振幅目盛を0.1dBとし、50MHzを中心としてスパン100MHzで測定してみました。

これが今回取り換えのため購入したコモンモードフィルターの周波数特性

これが今回修理したコモンモードフィルターの周波数特性です。

コモンモードフィルターは周波数特性だけで評価できるものではありませんが、ちゃんと特性が再現されているようです。 修理品はスペアとして保管しておくことにしました。

コモンモードフィルター検査につづく


JA1CTV
装備の道

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