HFリグCW感度比較


先日のVUHFリグの感度比較に加え、HF帯のリグの感度比較をやってみました。

今回比較するのは、私の手持ちのHFリグで、IC-705, KX-2, FT-817, FT-891, IC-7610でやってみることにします。

測定方法

VUHFと基本的には同じ構成です。 RFシグナルジェネレータ(RF SG)を、今回は変調はかけずにCWを被測定リグのアンテナ入力端子に接続。

RF信号の入力レベルは -120dBmとし、そこから5dBづつ入力レベルを落としていきます。 リグの音声出力 を直接PCのライン入力に接続して、WaveSpectraで音声スペクトラムを測定し、信号とノイズフロアとのC/N比を測定します。 最初に、この中で最大の入力レベルである-120dBmの時のWave Spectraのレベル表示で‐60dBになるようにリグの音声出力を合わせます。 無線機の感度は入力レベルをどれだけの音声レベルで復調できるのかと同時に無線機自体のノイズフロアレベルの両方が影響しますが、どちらかを一定にしておく必要があります。 そうしないと単に「これくらいの入力レベルで音声出力とノイズフロアがこれくらいでした」というような報告になってしまい、2つの変数が測定結果に混在すると比較になりません。 このため-120dBm入力で無線機の音声出力を合わせておくことにします。 その状態で入力信号を下げていくことで、信号とノイズフロアの比較をしていきます。 下記の評価の中の表現にはノイズフロアが高い低いという表現が出てきますが、これは実際にそのリグのノイズレベルが高いとか低いということでは必ずしも無く、同じ音声出力を得るためにどれだけノイズレベルが上がってくるかということを表していますのでこの点をご理解ください。

測定するバンドは7MHz, 14MHz, 21MHzの3バンドとしました。 リグの条件を合わせるために次のようにしています。 プリアンプはOnにしました。 HFでプリアンプが必要かという話もあろうかと思います。 プリアンプが無いリグもあるのですが、ここは最大感度ということでプリアンプをOnとしています。 ただ、IC-705やIC-7610のように2段階のプリアンプがある場合はPreAmp 1を選択しています。 フィルターのバンド幅が可変できる場合は250Hz幅にしています。 ノイズフロアとのC/N比較の測定なので特に選択度特性は問わないでよいかと思いますが、だいたいほかの機器と合わせてあります。 Noise ReductionはOffにしています。 Audio Peak Filter(APF)はOffにしています。 すべてのリグにAPFがあるわけではありませんし、APFをOnにするとフィルター帯域内のノイズフロアのレベルが「なで肩」になり、特定できないためです。 RF Gainは最大としています。C/Nはフィルター帯域内のノイズフロアとキャリアの差を測定しますが緑色のラインは過渡特性のためピークレベルの赤いラインを使用します。

そして、その様子をカメラで録画し、リグの内蔵スピーカーからの音声も同時に録音します。 その様子も動画で残してあります。

では早速見ていきましょう。

IC-705

IC-705 7MHz

周波数は7.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でIC-705の音声出力C/Nは18dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは11dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは9dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは5dBになりました。

 

IC-705 14MHz

周波数は14.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でIC-705の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは16dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは12dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは8dB位になりました。

IC-705 21MHz

周波数は21.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でIC-705の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは17dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは11dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

IC-705 受信動画

最後にIC-705でそれぞれの周波数でRF SGからの入力レベルを-120dBm、-125dBm、-130dBm、-135dBmと落としていった場合の録画です。 音声はRF SGのファンの音などもあったり、反射によって聞こえにくい場合もありますが-135Bmまで各バンド聞こえていました。7MHzの-135dBmは少し厳しい感じです。

 

KX-2

KX-2 7MHz

周波数は7.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でKX-2の音声出力C/Nは11dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは9dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは7dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは3dB位になりました。

KX-2 14MHz

周波数は14.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でKX-2の音声出力C/Nは18dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは13dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは11dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

KX-2 21MHz

周波数は21.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でKX-2の音声出力C/Nは19dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは14dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは9dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは6dB位になりました。

KX-2 受信動画

最後にKX-2でそれぞれの周波数でRF SGからの入力レベルを-120dBm、-125dBm、-130dBm、-135dBmと落としていった場合の録画です。 音声はRF SGのファンの音などもあったり、反射によって聞こえにくい場合もありますが-135Bmまで各バンド聞こえていました。7MHzの-135dBmは少し厳しい感じです。

 

FT-817ND

FT-817ND  7MHz

周波数は7.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-817NDの音声出力C/Nは11dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは15dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは10dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

FT-817ND 14MHz

周波数は14.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-817NDの音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは16dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは10dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

FT-817ND 21MHz

周波数は21.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-817NDの音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは14dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは11dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは6dB位になりました。

FT-817ND 受信動画

最後にFT-817NDでそれぞれの周波数でRF SGからの入力レベルを-120dBm、-125dBm、-130dBm、-135dBmと落としていった場合の録画です。 音声はRF SGのファンの音などもあったり、反射によって聞こえにくい場合もありますが-135Bmまで各バンド聞こえていました。

 

FT-891

FT-891 7MHz

周波数は7.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-891の音声出力C/Nは19dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは15dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは10dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

FT-891 14MHz

周波数は14.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-891の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは16dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは10dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

FT-891 21MHz

周波数は21.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-891の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは14dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは11dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは6dB位になりました。

FT-891 受信動画

最後にFT-891でそれぞれの周波数でRF SGからの入力レベルを-120dBm、-125dBm、-130dBm、-135dBmと落としていった場合の録画です。 音声はRF SGのファンの音などもあったり、反射によって聞こえにくい場合もありますが-135Bmまで各バンド聞こえていました。

 

IC-7610

IC-7610 7MHz

周波数は7.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でIC-7610の音声出力C/Nは23dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは19dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは13dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは10dB位になりました。

IC-7610 14MHz

周波数は14.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-891の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは15dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは12dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

IC-7610 21MHz

周波数は21.003MHz CWでの測定です。

-120dBmのRF SGからの信号を入れた状態で、Wave Spectraの表示が、-60dBになるようにリグの音声レベルを調整します。 この状態でFT-891の音声出力C/Nは20dBでした。

その状態でRF SGの出力を‐125dBmに落とします。 C/Nは15dBになりました。

RF SGの出力を‐130dBmに落とします。 C/Nは12dBくらいです。

RF SGの出力を‐135dBmに落とします。 C/Nは7dB位になりました。

IC-7610 受信動画

最後にIC-7610でそれぞれの周波数でRF SGからの入力レベルを-120dBm、-125dBm、-130dBm、-135dBmと落としていった場合の録画です。 音声はRF SGのファンの音などもあったり、反射によって聞こえにくい場合もありますが-135Bmまで各バンド聞こえていました。

この動画の最後にAPFのOn/Offをしています。 上記の試験では他の機器と条件を合わせているのでAPFはOffにしていますが、APFを入れることでどれだけ聞きとりやすくなるかもよくわかると思います。

 

結果まとめ

以上の結果のまとめです。 数字はWaveSpectraで測定したC/N Ratio(単位はdB)です。

同じ条件の7MHz、₋135dBm入力のケースを5つの機器で並べてみるとこんな感じです。

IC-705

KX-2

FT-817ND

FT-891

IC-7610

これを見てまず感じることを書いてみると

  • IC-705については帯域フイルターの切れはとても良いのですが、フィルターの帯域外、帯域内のノイズフロアが少々高い。帯域外は特に2kHzあたりまでのノイズが高い。2kHz以上ではノイズが低いのだが残念。 特に帯域内ノイズについては、ここにも書いたように帯域は350Hz 以下とし、下のほうを切るといいと思います。今回は250Hz帯域にしているので特有のノイズはカットされています。IC-705はVUHFとHFのバランスが取れていると思います。
  • KX-2 についてはLow bandの感度が今一つという感じがしますが、これは少し意外でした。KX2の感度は良いと思っていたのです。 しかし、音声帯域でのスペクトラムを見ると判るのですが、KX2はフィルター帯域内のノイズフロアは高いものの、フィルター外のノイズフロアが低いです。 特に高い周波数でノイズレベルが低い。 これで聞きやすく耳が良いと感じるものと思います。
  • FT-817NDについては帯域内のノイズも低いが、帯域外のノイズレベルも低いです。帯域外はもはやFT-891よりも低いレベルです。VHF/UHFでの感度については少し残念でしたが、HFは素晴らしいと思います。BPFがクリスタルフィルターで500Hzのためなだらかになっています。
  • FT-891は帯域内ノイズが低い、しかし帯域外のノイズフロアが少し高いようです。低周波数のほうのノイズはDSPフィルターでしっかり切れている感じです。
  • IC-7610 のノイズフロアレベルはフィルターの帯域内及び帯域外の両方とも飛びぬけて低いです。以前友達がIC-7610はとても静かなリグと言っていたことを思い出しました。

このノイズの点もまとめてみると次のようになります。 どのリグも音声レベルでの出力はほぼ同じ、これは-120 dBmの入力にて音声レベルを合わせているのでおそらく当然なのだろうと思います。 要するに、どれだけノイズレベルが低いかに感度や明瞭な聞きやすさが依存しているかということであると思います。

以上、これはあくまでも機械的に測定した結果であり、HFだけの比較です。 それぞれの個体差もあると思われます。 さらに音声に対しての了解度という意味では、音の作り方、聞こえ方なども大いに了解度には影響を与えます。 ここでは単なるRF入力信号からAF出力までを機械的に比較したという一つの目安でしかありませんので、その点を十分にご理解の上参考とされてください。

 


JA1CTV
装備の道

2件のコメント

  • JR2KHB 須田

    早速追加実験ありがとうございます!!楽しみにしておりました。FMほどではなくとも、結構差が出るものですね。

    記事内でご紹介いただいた、以前の実験結果も拝見しました。HF CWに関しては817は案外優秀ということが分かって、内心喜んでいます笑

    そして、SOTA向きの機種ではありませんが、FT-891がこれまた意外な好成績で、驚きました。ただの廉価機とあなどるなかれ、ですね。

    • JA1CTV

      須田さん
      はい、FT-817は素晴らしいリグだと思います。 まあ、今回のHFの感度比較もSメータが全く触れないようなレベルでの比較です。どのリグも素晴らしい感度であることは間違いないです。

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